2025年7月の代表メッセージ

7月の代表メッセージ

☆2025年7月17日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]

◇ 代表メッセージ ◇
■□ いじめを許さない、抑止力を考える □■

すでに夏休みがスタートした学校もあります。
今年も、6月も含めて暑い暑い夏になっています。
子どもたちにとってこの夏休みが、学習もさることながら、精神的なリフレッシュの時間や
日頃できない体験の機会になるといいですね。

先日、高校生にいじめについて話をさせていただきました。
講演の前に、校長先生と生徒指導の先生とお話したのですが、
「コロナ禍が過ぎ、いじめ問題が、以前の状態にもどりつつある」
という感覚をお持ちでした。
この点は、私たちが相談状況から感じていることと一致しています。
また、理不尽としか思えないような要求をしてこられる保護者も増えてきて、
保護者対応に時間をとられていることも感じられました。

今、いじめが増えつつあるのです。
マスクに阻まれ、会話もままならない状況が続いておりましたが、
コロナ禍が収まりつつある今、生徒と生徒の距離が縮まり、接触面積が増えていることが、
大きな要因になっているのでしょう。

私たちは、いじめを減らすためには、生徒自身の「いじめをしない」という自覚、
決意が重要だと訴えています。
「いじめには加害者がいる」、加害者のいないいじめは成立しないんだと話してきました。
ひとりひとりが、「私は、ぜったい、いじめをしない」と毎日、毎日、自分に言い聞かせ、
日々に決意していたら、いじめが起きることはありません。

しかし、そうは言っても簡単にいじめが起きてしまうことも事実です。
ですから、抑止力が必要です。
その抑止力には、モラル、道徳心の醸成があります。
さらには、「教師が怖い」ということも抑止力の1つでしょう。
「いじめたら叱られる」ということです。
また、いじめを許さない雰囲気を醸し出している「校風」や「クラスの空気」を創り出すことができれば、
いじめはほとんど発生しません。
私たちは「いじめは犯罪!絶対にゆるさない!」というポスターの掲示運動を展開していますが、
「いじめは犯罪になる」ということを生徒に訴えることも、抑止力を働かせることになると考えています。

7月1日にNHK NEWS WEBで
「札幌 中1女子生徒いじめ自殺訴訟で両親と市の和解が成立」というニュースが流れました。
その和解額が、6000万円という報道です。

札幌市立中1女子生徒が、2021年10月に自殺し、2024年7月に保護者が札幌市に対して、
およそ6500万円の損害賠償を求める訴えを起こしていました。
この生徒に対するいじめについて、新聞報道では、
——
訴状や市教育委員会の第三者委員会の調査報告書によると、
女子生徒へのいじめは小学5年だった2019年11月以降に悪化。
「髪の毛を引っ張られた」、「雪に埋められた」などの暴力行為、
「上靴や自転車のサドル、スマートフォン、財布を盗まれた」、「トイレに閉じ込められた」、
「修学旅行で遊覧船から落とされそうになった」等のいじめを受け、
小学校のいじめアンケートに、「仲間はずれや無視をされる」、「たたかれたり、けられたりする」、
「持ち物をかくされたり、いたずらされたりする」、「悪口を言われる」、「どれい扱いされる」等と、
複数回、答えていた。
また、学級担任に繰り返し相談したが、「後で話しておくね」と言われるだけだった。
死のうとしたことを相談しても真剣に取り合ってもらえなかった。小学6年の時には、
「飛び降りるために校舎屋上に上ろうとしたのを止められ、逆に扉の鍵を壊したことで先生から怒られた」
さらに、小学校から中学校へのいじめに関する情報の引き継ぎも不十分で、
中学校でも「髪の毛を引っ張られたり、靴を踏まれたりした」等いじめがあったが、
中学校はいじめが「重大レベル」とは判断せず、いじめを認識しながら保護者に連絡せず、
訴状では、学校側の注意義務違反で、女子生徒のうつ状態が悪化し自殺につながったとしていた。
——-
と伝えています。

NHKの報道を下記に引用いたします。
——-
これまで札幌地方裁判所で和解に向けた話し合いが行われていて、
裁判所からことし4月に示された和解案に、両親と市の双方が応じる意向を示していました。
原告の弁護士や札幌市によりますと、
1日行われた非公開の協議で、市側がいじめの防止措置が不十分だったと認めて
両親に謝罪し、解決金として6000万円を支払うことなどを条件に、
和解が成立したということです。
生徒の両親は、和解案に応じることを決めたことし5月に、弁護士を通じてコメントを出しています。
父親は「いじめによって命を絶った娘への代償は計りしれず、
今回の和解で娘への償いがすべて終わったとは思えません。
元担任を含め学校の先生方、市教委、そして札幌市長には責任を自覚し、
今後二度と同じことが起きないようにしっかり対策をとっていただきたい」などとしています。
また、母親は「娘の命は何物にも代えることはできません。
私は、娘にもう二度と会うことはできないのです。
このやりきれない思いが消えることはありません」などとしています。
——-

ほんとうに残念な事件です。
報道を読むかぎりではありますが、
小学5年生の頃からいじめを受け、自殺未遂にまで追い込まれていたのに、
学校、そして教師が、いじめを放置し、
この子の苦しみに関心を持たなかったようにしか読めません。

先生たちが、協力したら止められないいじめはありません。
この子を守ることができたはずです。

冒頭、抑止力のことを話題にしましたが、
今回の和解のように、いじめを放置することで、多額の和解金を払うことになるということを
学校関係者は知っていただきたいと思います。
また、いじめ加害者も、本来、負担しなければならないはずです。

賠償金や和解金の額が大きくなることも、いじめを抑止する力です。
いじめの裁判において、残念ながら賠償金が多額になるケースはまれです。
判決を下す側も、遺族や被害者の心情をもっとくみ取っていただきたいものです。
子どもたちにもこのことを認識してほしいものです。

夏休み、本番です。
今の子どもたちは、夏休みであっても、ネットを介して、友だちとつながっています。
そして、さらに見えない大人の社会とも簡単につながってしまいます。
保護者の知らないところで、出会ったり連絡をとったりなどして、
事件に巻き込まれることがあるのです。
保護者としては、夏休みだからこそ、子どもたちの生活、
そしてネットに目を配ってあげたいと思います。
何か気になることがございましたら、遠慮なくご相談下さい。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

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